2009/07/22(水):「ヤブノナカ」本編シナリオ【第3話】
第3話は「武弘の物語」です。
武弘の物語は、息絶えたはずの武弘自身のモノローグで始まります。
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武弘「俺の20歳の誕生日、真砂がはにかみながら俺に小さな包みを渡してくれた」
真砂「兄さん、これは僕から」
武弘「真砂が俺に?」
真砂「うん、初めてのプレゼント。少しずつ、お金を貯めて買ったんだ。
気に入ってくれると嬉しいんだけど」
武弘「開けていいか?」
真砂「もちろん」
・がさがさと包みを開ける音。
武弘「帽子」
真砂「兄さんに似合うと思って買ったんだ」
武弘「…」
真砂「…気に入らないかな?」
武弘「似合うか?」
真砂「うん!」
武弘「ありがとう、真砂。大事にする。どこに行くのにもかぶっていくよ」
真砂「うん!」
武弘「本当に嬉しかった。
真砂は本当に、素晴らしい少年に育ってくれた。
俺は、それが誇らしかった」
◎武弘の家
武弘「学校の卒業を間近に控え、俺は卒論の準備で忙しくなった。
真砂の相手もなかなかしてやれなくなってしまった」
真砂「去年も、その前の年も忙しいって遊んでくれなかったじゃないか」
武弘「お前の相手をしてやれないのは悪いと思ってるよ。
だけど、俺も忙しいんだ、分かってくれよ」
真砂「やだ」
武弘「やだってお前」
真砂「やだ」
武弘「他に学校の友達とかいるだろう。そいつらと遊んだらどうだ?」
真砂「僕は兄さんと遊びたいんだよ。学校の友達なんて、みんな子供ばっかりでつまんないし」
武弘「そんなこと言って、気の合うやつの一人くらい、いるだろ」
真砂「学校にはいない。僕が好きなのは兄さんだけだよ」
武弘「おいおい、真砂。何言ってるんだ。俺達は兄弟だぞ。そんなにべったりしてたらおかしいだろ」
真砂「兄さん、僕、知ってるんだ」
武弘「何を?」
真砂「本当のこと」
武弘「本当のことって何だよ」
真砂「僕と兄さんの本当のこと」
武弘「お前…まさか」
真砂「ふふっ」
武弘「真砂!」
真砂「ははは!」
武弘「結局俺は真砂に押し切られる形で、海に行くことになった。
正直、真砂の俺に対する依存心を何とかしなければ、ってそんな気持ちもあった」
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第3話は武弘から見た世界です。
弟の過度なブラコンに戸惑いを隠せない武弘。
このままではだめだと思っていたときに現れた城太郎。
弟の心が城太郎に向いていくことに、武弘は安心と同時に胸の痛みを覚えていた。
被害者である武弘が、何故「自分が犯人だ」と言ったのか。
第3話で真相が明らかになる…!?
次回はオリジナルエピソードのシナリオをちょっとだけ公開!
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