キャストインタビュー/朗読劇「超訳文学 芥川龍之介」

今井文也さん、広瀬裕也さんが明かすリアルな会話劇へと“超訳”された有名文学へのアプローチ――朗読劇『超訳文学 芥川龍之介』アフターインタビュー

 

フロンティアワークスによる朗読劇プロジェクト「Rabbit Note Project」の第1回公演となる『超訳文学 芥川龍之介』が、2024年2月3日(土)〜4日(日)に、アニメイトシアターで開催されました。

今井文也さんと広瀬裕也さんが出演した本公演では、芥川龍之介氏の有名文学を現代的な解釈でアレンジしたオリジナルシナリオが展開。おふたりの軽妙な掛け合いによって、文学の魅力にとっつきやすい形で触れられる、見どころ満載の内容となっています。

アニメイトタイムズでは、公演後の今井さん、広瀬さんにインタビューを実施。公演の感想や物語の聴きどころ、生で掛け合うお芝居の楽しさなどを伺いました。

 

おふたりが感じた超訳文学の魅力とは?


ーーまずは、公演を終えての感想をお聞かせください。

広瀬裕也さん(以下、 広瀬):リハーサルで事前に演じられる機会が何度かあったり、事前に音声ドラマを録らせてもらったりと内容は理解したうえで臨んだのですが、やはり本番ならではの空気感がありました。

今井文也さん(以下、今井):それが難しいところですね。お互いにやりたくなってしまうというか。今回は手に持っているタブレットやスマホが台本なので、慣れも必要でした。色々と動きをつけられるので、そこは楽しかったなと思います。

ーー生ならではのアドリブも多数見られましたね。

広瀬:程よく入れる塩梅が難しかったです。

今井:お客さんも笑ってくれていたので、良かったです。何を入れたのかはよく覚えていないですが(笑)。

ーー有名文学を現代的な解釈でアレンジする『超訳文学』というコンセプトについては、どのように感じられましたか?

広瀬:面白い形の朗読劇だなと思いました。活字で「難しい」と思ってしまう人が耳で聴いて、動きを見て……。より分かりやすく、気軽に触れられるのは素敵だなと。

ーー今回の公演を通じて、芥川龍之介氏の作品に初めて触れる方もいるかと思います。

広瀬:そうですね。若いお客さんもいらっしゃいました。中々そういった機会がない人もいると思うので。

今井:普段本を読まない人には、新鮮味のある内容だったかもしれないですね。僕たちはあらすじやどういう登場人物が出てくるかなど、ある程度の事前知識を頭に入れつつ、あまり原作自体は読み込みすぎないようにしていました。

 

意識したのは“リアルな会話劇”のテンポ感


ーー本公演は3パートで構成されています。最初に披露されたのは、今井さん演じるニートと広瀬さん演じる藤原俊仁の軽妙な掛け合いが特徴的な「『羅生門」(のち『芋粥』ゆえに『羅生門』)」でした。

広瀬:ニートと藤原は対等な関係なので、あれを最初にやることで、その後の流れも作りやすかったです。少し間違えた部分もありましたが、それでもアドリブで続けられたのは、しっかり会話ができていたからだなと思います。

今井:今思い出しましたが、最初にアドリブを入れたのは広瀬さんだったんです。僕がセリフを飛ばしたとき、少し笑いながら「なんだって?」と(笑)。そこを拾ってくれたからこそ、掛け合いのテンポ感が増した気がしています。

広瀬:リアルな会話劇なので、グダグダにならないラインはかなり難しいんです。

今井:そうですね。本筋から外れすぎたりとか。

広瀬:村井さん(脚本・演出の村井真也さん)から、「たっぷりやらなくてもいいよ」と言っていただいたので、それこそ居酒屋で飲んでいるような空気感を出したいなと。

今井:僕はどんどんテンポを上げていくように意識していました。普段の姿に近かったので、多分僕らは姿勢が悪かったですよ(笑)。リムジンに乗っている場面でも、かなり寛いでいましたから。

広瀬:それがリアルな感じなのかも。台本がスマホやタブレットだったので、より動きをつけながら演じられました。

ーー続く「ショートコント『鼻』」は、お客さんのリアクションが特に大きかったですね。

広瀬:一番笑いが起きたお話でした。原作を知らなくても分かりやすいし、馴染みやすい物語だと思います。声優という職業も絡めてくださったので、個人的にも面白かったです。

今井:間に挟むのにちょうど良いですよね。でも声優に関するエピソードトークをするアドリブパートは、しっかり台本に書いてあったんです。「僕が知ってる話だと……(ここからはアドリブで)」って(笑)。

広瀬:そういう展開もお客さんがいるからこそのライブ感ですよね。脚本が面白いので、演技をこうしようというよりは、トントンと進んでいく感じで、リアルな生の掛け合いの面白さがあったと思います。

ーーラストを飾る「のち『藪の中』」は、打って変わってサスペンスドラマのような雰囲気が漂っていました。

今井:お客さんも聞き入っていましたけど、「分かってくれたかな?」という不安はあります。

広瀬:そうですね。長台詞の連続なので、「よく分からない」と思われていたら怖いなと。ただ、原作自体がそうなので、誰が犯人なのか分からないのは正しいんですよ。

今井:お客さんにアフタートークで少し反応を聞いたのですが、分かっている方もいましたね。お客さんと演じている側で少し感覚の異なる部分はあったかもしれませんが、ただ台本を読むだけだと難しくて。僕としては、最終的にショートコント『鼻』で登場した内島が全てを演じていたという真相は、あとから「そうなんだ……」という感覚で聞いていました。

ーー「のち『藪の中』」で、広瀬さんは1人6役にも挑戦されていて。

広瀬:内島を演じたからこそ、『藪の中』の6役を演じないといけなかったんです。

今井:2:8くらいのワード数でしたし、流れを切らずに演じ続けていたので本当に大変そうでした。かなり難しかったと思います。一方で、「やりがいがあって楽しそうだな」と。

ーーパートごとに雰囲気が変わることはもちろん、一つの公演の中でやるからこその伏線も盛り込まれていましたね。

広瀬:そうなんですよ。この朗読劇の面白い点なのですが、3作品がやや地続きになっているんです。例えば、途中で話に出てくる殺人事件やクロロホルムのくだりとか。そういった伏線があるからこそ、しっかり聞いていると、一つに繋がっていることが分かるようになっています。

今井:それぞれが全く異なるテイストに見えて、見返していくと繋がっていたり、伏線が入っていたりするので、その辺りに気づくと更に楽しめるんじゃないかなと思います。

ーー本公演は音声ドラマとしても配信中です。公演の内容を思い出したり、散りばめられた伏線を探したりと何度も聴いて楽しむことができますね。

広瀬:それこそ「のち『藪の中』」は、一度だけでは分からないところがあると思いますし、「この人はどう言っていたっけ?」という場面に戻って聴いてもらうこともできます。しっかりした音響で録られているので、よりクリアに聴こえるのではないかと。

今井:公演では生々しく演じましたが、音声ドラマは多少整えられているので、違いを楽しんでいただけると思います。

ーー最後に、ファンのみなさんへメッセージをお願いします。

広瀬:公演にお越しくださった方、音声ドラマを購入していただいた方、ありがとうございます。我々としても少人数でお芝居をする機会は少ないので、ふたりであれだけの分量の物語を演じられて、めちゃくちゃ楽しかったです。ふたりでしかできない空気感があったり、日にちによってもそれが変わったりする“生もの”をお届けできたのではないかなと思っています。

いわゆる文学と聞くと、堅苦しく感じる人も多いと思いますが、この作品は誰にでも分かりやすい“超訳”をしてくれています。気軽に聴きながら「昔こういうお話があったんだな」と思って、そこから原作を見ていただけると嬉しいです。引き続き何度でも楽しんでください!

今井:広瀬さんが大体言ってくれましたね。一体どこがアドリブだったのかは音声ドラマと照らし合わせつつ、会場で耳にした声優関連のアドリブは、全て忘れていただければ幸いです!(笑)

 

元記事:アニメイトタイムズ掲載キャストインタビュー

 

▼公演の詳細はこちら(公演は終了しました)
超訳文学 芥川龍之介