シナリオ公開④

○旅館の客間

 

鴉羽   「じゃあ、乾杯」

箒星   「かんぱーい」

レーツェル「かんぱいですの。んく、んく……」

鴉羽   「……へぇ、とっても飲みやすいのね」

レーツェル「ワインのような華やかな味わいですわ」

箒星   「味わいも甘口ですね。んー……おいしいですっ」

灰桜   「みゅみゅ……人形もお酒に酔ったりするのでしょうかっ」

月下   「アルコールで酩酊することは無いであります」

灰桜   「そうなのですか?」

月下   「可燃室で焼却され、水分は冷却液となるのであります」

灰桜   「じゃあ、人間の皆さんのようにいい気分にはなれないんですね」

レーツェル「そういうことです。鴉羽さんの言うように、気分だけ……ですわね」

鴉羽   「……ひっく」

箒星   「鴉ちゃん?」

鴉羽   「うっ……ううう~……」

レーツェル「なんで泣いてますの?」

鴉羽   「う……うううっ……ううううう~……ぐすんっ……」

灰桜   「か、鴉羽さん?」

鴉羽   「あたっ……あたしだって、いつも一生懸命やってて……いっぱいいっぱいなのよぉっ……」

鴉羽   「なのになのに、いつもみんなして勝手なことばっかり言うんだからぁ~……」

月下   「これは……」

箒星   「酔っ払ってます……ねぇ」

鴉羽   「マスターもマスターよぉ……! いっつも好き放題言って、こっちの苦労も知らずに~……!」

鴉羽   「もおっ……もお、飲まなきゃやってらんないわよぉっ……!」

鴉羽   「んくっ……んくっ……んくっ……」

灰桜   「みゅみゅみゅ、人形は酔わないのではないのでしょーか?」

鴉羽   「うわわ~~~んっ……!」

月下   「なんとも酒臭いであります」

箒星   「もしかして、冷却水にお酒が混入したのでしょうか? そのせいで動作不良を起こしているとか……?」

月下   「ですが、ランドセルが正しく装着されていれば、あり得ない事態であります」

レーツェル「ランドセル……そういえば」

 

 

鴉羽(回想)「配線もすこし違うんだけど……大丈夫かしら?」

レーツェル(回想)「このレーツェルを見くびらないでくださいませ。完璧にこなして見せますわ」

 

SE:がしゃん、とマウントする音。

 

レーツェル(回想)「完璧ですわ」

鴉羽(回想)「うーん、何だかしっくりこないわね」

 

レーツェル「もしかして……あのとき間違えてしまいましたの……?」

月下   「レーツェル、原因に心当たりがあるのでありますか?」

レーツェル「え……あ、いえいえ。鴉羽さんも普段重責を担っていますから、崩れたいときもありますわ」

レーツェル「このレーツェル、最後までお付き合いいたします。今宵は思う存分吐き出してくださいませ」

鴉羽   「レーツェルぅぅぅ……初めて会ったとき、信用できるんですか?なんて疑ってしまったけど……そんなあたしを許してちょうだいねぇぇぇ……」

レーツェル「え、ええ」

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