シナリオ公開②
○旅館の客間(夕方)
女将さん 「こちら、暁の間でございます」
灰桜 「わぁああ~……! お部屋から海が見えます!」
箒星 「素晴らしい展望ですねぇ。水平線があんなにくっきり」
月下 「敵戦艦の偵察にはうってつけであります」
レーツェル「潜水艦で乗り付けるのにもうってつけですの」
鴉羽 「違うでしょ。と、とにかく……素敵なお部屋をありがとうございます」
女将さん 「その名の通り、朝焼けの眺望は見事ですよ。それではごゆっくり……」
灰桜 「もしかして……今日は海でも遊べるんですか!?」
鴉羽 「違うわよ」
月下 「もう紅葉の季節であります」
箒星 「夏の間は、海水浴も出来るらしいですけどねぇ」
灰桜 「みゅみゅっ! そ、そうなのですか……てっきり皆さんで楽しめるのかと~」
レーツェル「お姉さま、わたくしの調べでは、温泉旅行とはそんなに活動的に楽しむものではありませんわ」
箒星 「ええ、まずはお茶でも一服どうぞ」
月下 「温泉饅頭も用意されております」
灰桜 「で、では一口いただきます!」
鴉羽 「慌てないの」
灰桜 「はもはも……おいひいですっ」
箒星 「ふふっ……旅情がありますねぇ」
灰桜 「それ、それですっ」
箒星 「はい?」
灰桜 「旅情とは、温泉旅行の楽しみ方とは一体なんなのでしょーか?」
鴉羽 「それはまあ、人それぞれだと思うけど……」
灰桜 「それを知りたいんですよ~」
鴉羽 「あたしの場合は、やっぱり温泉ね。広々したお風呂に浸かると、開放的な気持ちになれるわ。温泉の成分はお肌にもいいのよ。みんなはどうかしら?」
箒星 「私はお風呂もそうですが、お料理が楽しみですねぇ。夕食では海と山の幸を使った名物料理を振る舞ってくれるのだとか」
月下 「やはり景色であります。夕暮れから夜明けまで。日差しに照らされて変わる風景はきっと見ものであります」
レーツェル「皆様、一番の醍醐味を忘れていますわ」
灰桜 「みゅ?」
レーツェル「温泉旅行に欠かせないもの。それは……」
灰桜 「それは……なんでしょーか?」
レーツェル「しっぽり、ですわ」
灰桜 「しっぽり?」
レーツェル「ええ、しっぽり」
灰桜 「しっぽりとは……?」
レーツェル「さっ、堅苦しい浮世は忘れて、しっぽりと戯れましょう」
箒星 「みなさぁん、浴衣に着替えませんかぁー?」
月下 「自分に合う大きさがないであります」
箒星 「こっちのお子様用ならきっと大丈夫ですよぉー」
月下 「むぅ……(不満げ)」
レーツェル「お姉さまも、ほら」
灰桜 「わたしも子供用がぴったりですね。月下さんが黄色なら、わたしはやっぱり桜色でしょうか?」
鴉羽 「装いが変わると、きっと気持ちも変わるわね。どうせなら先に温泉に入らない?」
箒星 「いいですねぇ、さきほど案内を確認しましたが、内湯あり露天風呂ありでとっても充実していました」
灰桜 「みゅみゅっ! 露天風呂と言いますと!?」
月下 「その名の通り、屋外に湧いている温泉であります」
灰桜 「お、おおおお屋外? 他のお客様に、そのっ……み、みみみ見えてしまうのではないでしょーかっ?」
鴉羽 「この時間は貸し切りにしてくれるっていってたわ」
灰桜 「でででですが万が一、外から見られてしまうということがっ」
箒星 「灰ちゃん……ちゃんと目隠しされてますよぉー」
灰桜 「そ、そそそそう言われましても~」
レーツェル「そうですわ。もし不埒者がお姉さまの柔肌を見ようものなら、このレーツェル、その両目を指でこうやって……」
鴉羽 「物騒なこと言わないの、灰桜も考えすぎよ」
灰桜 「はぃぃ……」
鴉羽 「まあ、好きなお風呂に入ればいいわ。さっ、行きましょう」
月下 「出立であります」