素直になるのはやっぱり悔しい!
収録を終えられてのご感想をお願いします。
川原慶久さん(以下、川原):世界観が面白いなというのが第一印象です。オメガバースの世界の中でも、ファンタジーの色が入るとこういう世界観になるんだなと。それから「人に歴史あり」といいますか、こういう過去があるからこういう性格になったんだなっていう流れが、レムナントとペンデュラムの両作品を通じて見られたので、時間の経過を楽しめる面白い作品だったなぁと思います。
佐藤拓也さん(以下、佐藤):今回はメインカップルをそばで見ていることが多かったのですが、若きオメガの悩みを見て、状況は違うけど、自分もそういった経験があるなぁと思ったり。今までオメガバース作品はいろいろやらせて頂いていますが、同じオメガゆえの苦悩などを共有できたことはあまりなかったので、新鮮に感じました。
ご自身が演じられたキャラクターの印象はいかがですか?
川原:最初は、ルアードに対してものすごい辛辣だなという印象がありました。ですが過去の話などを続けてみていくと、彼のなかで一本芯の通ったところがあって、なんというか見た目通りじゃないところはすごく興味を惹かれますね。彼がこの先、素直じゃない性格のまま何を経験して、ダートと一緒にどういう人生を歩んでいくのか、非常に興味深いです。未来の話も含めて、いろいろな話を読者の皆さんと見られたら嬉しいと思います。
佐藤:作品全体からは切なさをすごく感じるんですけれども、その影の部分だけじゃなく、影を照らす明かりの部分。それぞれのカップルの中に流れる空気感であったり、不意に訪れる喜びであったりというものが、すごく印象的に描かれているので、それが救いだなぁという風に感じています。
相手のキャラクターに対する印象はどうですか?
川原:人生に対して後ろ向きになったり、卑屈になる場面って人生の中で1、2回くらいはあると思うんです。でもダートからは、オメガという宿命を背負いながらも自分の人生を諦めず、運命に逆らって自分で自分の道を探そう、逃げてでもいいから自分のやりたい自由を探そうっていう気概が感じられるんです。魂の番になって、どうしても離れられない籠の中にいるのかもしれないけど、とても気高い魂を持っている彼の姿は、見ていてすごく気持ちがいいです。生命力にあふれてるなぁと思うところも多くて、ダートのことはかなり大好きです。
佐藤:すごく強引な人なんです(笑)。それに自信家だし、やけに余裕たっぷりだし。でも悔しいですけど、そこが彼の魅力だったりするんです。ダートはダートでやっぱり言いたいことも思うこともあるんですけど、気付いたら彼に包まれてしまっていて。そこが演じていても漫画を読ませて頂いても悔しいところですが、だからこそ身を任せてしまうのかなとも思います。でもやっぱり素直になるのはなんか悔しいんですよね!
キャラまんまですね(笑)。
佐藤:素直になっちゃったら負けな気がするので。
収録中、熱が入ったなと思うシーン、もしくは印象に残ったシーンはありますか?
川原:自分たちの関わったシーンに関しては、全部本当に面白いです。ドラマCDに限らずあらゆる作品において、このシーンだけ熱が入ったとか、このシーンだけ印象に残るっていうことはほとんどないです。印象に残るシーンって、それ以前のあらゆるシーンの積み重ねがあってこそだと思うんです。なので本当にどこが一番ということもなく、あらゆるシーンを楽しんでいただけたら嬉しいなぁって思いつつ、後藤光祐の変態神父ですよ(笑)。殴ることにためらいがなくなりました。いやー気持ち悪かった、いい意味でとても気持ちが悪かったです。
佐藤:今回ダートさんが一番真剣になったのはカイ君が発情したシーンだと思うんです、お話の上では。ところで我々がいなくなるシーンってフェードアウトが多いのですが、川原さんがすごく自由なお方でして……やけに腕を引っ張られたりとかして(笑)。なので熱が入ったという意味では、どっちが先にアドリブの集中が切れるかっていうのを川原さんと張ってたところでしょうか。
川原:楽しかったー(笑)。
これまでに運命を感じた出来事があれば教えてください。
佐藤:運命って、往々にして幸せな勘違いであることが多いと思うんですよね。だって自分がいつそうなるかなんてきっと予想もしていなかっただろうし、幸せな驚きってやつが「あ、運命かも」って感じる瞬間なのかなと思っています。現状は幸運にも、このお仕事でご飯を食べていけていることが、運命というかラッキーだと思っています。
川原:運命って実はあまりないと思っていまして、佐藤さんが仰っていた「幸せな勘違い」というのはとてもいい考え方だなと思います。例えばうちの猫が病気になって吐きましたっていうときに、汚いものを触っても愛しい相手だから嫌じゃないなとか。単純に心配なんだなって思った時に、出会えてよかったなとか、この子が一緒にいてくれてよかったなと思うくらいの、そういうものの積み重ねを死ぬ間際にふと思い出して、「なんかいい出会いしたな」って思ったら、それが運命だったってことなんじゃないかなと思います。
最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
佐藤:ダート役の佐藤拓也です。実はこのお話を頂いた時に僕は獣人だと思っていました。オメガバースは非常にファンタジックで夢のあるお話だと思っています。そこにまた獣人という要素が加わって……いいですね! 創造世界の自由さというものを再確認しますし、我々のお芝居の可能性というものをもっともっと広げていきたいなと思える、意欲のある作品だと思いますので、原作ともども楽しんでいただけると嬉しいです。よろしくお願いします。
川原:何か事前に格好いいこと言われると言うことなくなるんで、これでいいんじゃないかなって思うんですけど。
佐藤:使っていいですよ、先輩(笑)。
川原:じゃあもらう(笑)。それ全部俺が言ったことにしてもらって(笑)。いやなんだろう、それこそ最初獣人やると思ってましたって話に乗っかっちゃうと、
(掲載できないお話を語る川原さん)
まぁこの話使えないと思うんですけど(笑)。
佐藤:そうですね、これは使えないやつ!
川原:ということで改めまして……
佐藤:なんだったんだ今のおおお!! レコーダーの無駄ー!(笑)
川原:俺ね、人の時間の浪費するの大好きなんだ! ごめんごめん(笑)。
佐藤:うそでしょー(笑)。いいですけど(笑)。
川原:というわけで読者の皆様お目が高いから始まりまして……お聞きくださりまして本当にありがとうございます。たぶん漫画の世界が好きで、ペンデュラムとレムナントの作品をご覧いただいている方も多いと思いますが、改めて私たちがやっているバージョンの作品も、平行世界のひとつくらいのつもりで、皆さんの心に残る作品になってると嬉しいなと思いつつ、皆さんもいろいろな作品を楽しむ中で、自分にとって大事な、魂の番みたいな作品に出会うことを祈っております。
ありがとうございました。