登場人物:
・ベルゼブブ (CV: 置鮎龍太郎)
・マモン (CV: 藤原啓治)
・アズラエル (CV: 遊佐浩二)

マモン 「えーっと…確かLHとHLSの懇親会会場ってここだったはずだよな」

※飲み屋の個室に入るマモン。

マモン 「(溜息)…なんだ? まだ誰も来てないじゃないか。ったく、相変わらずマイペースなやつらだな」

マモン
「ん? スンスン……(客席側の匂いを嗅ぐ)なんだこの匂い? それもあちこちから……スンスン……」

※そこにベルゼブブが何かを食べながらやって来る。

ベルゼブブ
「ひゃあファフォン(やあマモン)。ふぁっふぁ?(待った?)」

マモン 「よお、ベルゼブブ……って、お前。また食ってんのか」

ベルゼブブ 「ふん(うん)。(もぐもぐ)ふぉれ、へっふぉーふぉひひーひょ?(これ、結構おいしいよ?)」

マモン 「食うか喋るか、どっちかにしろよ。なに言ってんだか、さっぱりわからん」

ベルゼブブ 「ふぉんふぉ(ホント)……【ごくり】ん。ほんと時間に正確だよねー、マモンは。さすがLHの稼ぎ頭~。投資信託部門の部長やってるだけあるよね。まっじめ~」

マモン 「単にお前がいい加減過ぎるだけだろ。広報はちゃんとやってんのか?」

ベルゼブブ 「え~、俺だってちゃんとやってるよ? 気が向いた時に。あ、マモンも食べる? 佃煮入りクリーム鯛焼き」

マモン 「遠慮しておく。いかにも胸焼けしそうだ」

ベルゼブブ 「美味しいのに~。あむっ(もぐもぐもぐ)」

マモン 「それにしても……なんでHLSのやつらは、誰も来てないんだ? この懇親会を企画したのだって、確かHLS側なんだろ? サタンが言ってたぜ」

ベルゼブブ 「さぁ? オレはなんにも聞いてないけど……あれ? なんかここ、すご~く良い匂いしない? (うっとり)はぁ~、なんか食べちゃいたいくらい~」

マモン 「俺もさっきから気になってた。なんの匂いだ?」

ベルゼブブ 「う~ん。花びらのはちみつ漬けみたいな、甘くて優しい香りだねぇ。おいしそ~♪ どこにあるのかな??」

アズラエル 「あのぉ……」

マモン 「? そんなもん、こんなとこにあんのか?」(アズラエルに気づかず)

メタトロン 「えー。マモンだって感じるでしょ? どこかなぁ。あ、こっち? そっちかなぁ?」(アズラエルに気づかず会場を見まわす)

アズラエル 「あの」(さっきよりも少しだけ大きな声で)

マモン 「うおっ!」(ベルゼブブと同に驚く)

ベルゼブブ 「わぁ」(マモンと同時。あまり驚いていない)

アズラエル 「すみません。遅れました……」

マモン 「なんだ、脅かすなよ。あんたも懇親会の参加者か?」

アズラエル 「うん……。本当は参加したくなかったけど、神が全員出席って言うから……」

ベルゼブブ 「えー? カミサマじきじきのお達し?」

アズラエル 「どんな命令でも、それが神の御心であれば受け入れなきゃ……」

マモン 「あんた一人か?」

アズラエル 「途中まではサンちゃん……サンダルフォンと一緒だったけど、急にいなくなっちゃって」

マモン 「どこ行っちまったんだ。あんたの相方は」

アズラエル 「別に相方じゃないし。この懇親会の幹事は自分だったくせに、『クミのシークレットライブが今日なんだ! ダッシュで行かなきゃ間に合わねぇ!』(棒読み)とか言ってどっかに行っちゃったんだよね」

マモン 「クミって、今話題のバーチャル3Dアイドルか」

ベルゼブブ 「良く知ってるね、マモン」

マモン 「市場調査も大事なんだよ」

アズラエル 「もー…仕事の納期が近いから俺、無理だって言ったのに……ミカさんは『隠し撮りコレクションの整理が忙しいから』って欠席だし、ガブさんは『寝不足で化粧のノリが悪いからムリ』とか言ってドタキャンだし……!」

マモン 「へぇ。そりゃ災難だったな」

ベルゼブブ 「そういえば、サタンから伝言あったんだった。えっとねー…“今日の懇親会だが、ベリアルはミカエルが来るかもしれないと知った途端暴走し、会議室を半壊させた為、出席禁止。ベルフェゴールも『天使なんかだいっ嫌い! そんなとこ僕が行くわけないでしょ!』と、失踪。俺含め、みな事情があり本日は参加できず。後はよろしく頼む“だってさ。オレは美味しいものが食べられればなんでもいいんだけどねー」

マモン 「なにぃ!?」

アズラエル 「うわぁ……そっちはそっちで面倒くさそう……」

マモン 「ああ、気分で仕事するやつとか、好き嫌いで仕事選ぶやつとか……めんどくさいなんてもんじゃない」

アズラエル 「俺だって、面倒なことイヤなのに……仕事だけしていたいだけなのに」

マモン 「お! あんた、HLSの社員のくせに珍しく社畜だな。ウチの社員以上に、やりたくないものはやらないって連中だと聞いていたが」

ベルゼブブ 「マモンもマジメだよねー。よくわかんないけど、なんかいっつも表彰されてるし」

マモン 「あのなぁ、普通だ普通。あと、ソロモンに目をつけられるのは困る」

アズラエル 「ソロモンって、人間でありながらLHの特別顧問に就任したっていう?」

ベルゼブブ 「そー。ソロモンのあのぶ厚い手帳ってホント迷惑だよね~。あれでオレたちのこと監視してさ。もうまさに凶器? 人のよさそうな顔して、 やることはエゲツないよねー」

マモン 「まあ会社ってのはそんなもんだろ。常に監視するやつがいてこそ、正常に機能するんだよ」

ベルゼブブ 「なにそれ~。一人だけ達観しちゃってさ」

マモン 「無用な争いは好まないだけだ。俺はお前みたいな戦闘タイプじゃないからな。これも処世術の一つ」

ベルゼブブ 「おっさんくさ!!」

マモン 「うるせえ、軽く傷つくんだよそれ!」

※スマホを取り出すアズラエル。スマホを操作する。

ベルゼブブ 「あ、ごめーん。一応気にしてたんだ?」(悪びれもせず)

マモン 「なんだかんだ言って、お前、いい年だろ」

ベルゼブブ 「え~? 違うよー。オレ、永遠のン~歳だ・か・ら!」

マモン 「お前だって歳気にしてんじゃねーか。何だ、『ン~歳』って」

ベルゼブブ 「マモンってばデリカシーないよね~。人に歳聞いちゃだめなんだよ?」

マモン 「女子か!」

ベルゼブブ 「あははー」

アズラエル 「あはは~……」(スマホを見ながら合わせて笑う)

ベルゼブブ 「あ、ごめんごめん。キミのことすっかり忘れた」

アズラエル 「ん、大丈夫。スマホで仕事してたし。……はぁ、こんなに誰かと会話するの久しぶりだから疲れた……」

マモン 「いつもはどうやって仕事してんだ?」

マモン 「基本、サーバー室に篭ってひとりで仕事してるから。必要なことはメールで連絡くれれば即レスするし。たまにサンちゃんが訪ねてくるけど、それはセキュリティが万全だから問題ない」

ベルゼブブ 「ずいぶん物々しいね」

アズラエル 「それくらいしないと駄目なんだ……。むしろ、もっとセキュリティレベルを強化しないとサンちゃん、うるさくて」

マモン 「サンちゃんって、お前の相方か?」

アズラエル 「だから、相方じゃないし! (ため息)相方どころか、サンちゃんは俺の平穏な日々を脅かす脅威そのものなんだ。……このあいだ一緒に人間界へ行って以来、暇さえあれば『キャンプしよう』だ、『飲み会行こう』だ……スルーしたいけど、『社内交流は大事って神が言ってた』って言われたら、断れないし……ううー」

※顔を抑えてしゃがみこむアズラエル。

ベルゼブブ 「そんなにヤなの?」

マモン 「誰でもワイワイ騒ぎが好きってわけじゃないだろ。イマドキの社員は特にな」

ベルゼブブ 「ふーん」

※立ち上がるアズラエル。

アズラエル 「でも、どんな理不尽な命令でも、それが神の御心とあらば受け入れる。それが社員の務め……総合商社HLSの社訓だし」

ベルゼブブ 「えー。そうかなー」

マモン 「わかる! わかるぞ、その心意気!」(力いっぱい)

アズラエル 「――マモさん! ……まさか同じ苦労を分かち合える人が、悪魔にいたなんて! マモさんも苦労してたんだ~!」

マモン 「おう! ミカエルのやつなんか、周りの迷惑考えねぇから大変だろ」

アズラエル 「ミカさんは別に~。でも、最近はウリさんの小言が増えたかも……。『正社員なのにサーバー室に篭り過ぎ』だとか、『報告・連絡・相談が徹底されていない』とか。うっかり部屋から出たときに会っちゃうと大変で……。最近、ラファさんまで、『人間界に降りていろいろ見てきたら?』とか言い出すし……」

マモン 「ウリエルも変わらねえなぁ。俺もそっちにいた頃は、ずいぶん文句を言われたな。お、そうだ! 近くに俺の行きつけの、美味~い牡蠣の店があんだよ。いくら天使って言っても、いろいろストレスも溜まんだろ。どうだ、たまには何もかも忘れて、パアーッと憂さでも晴らすか!」

アズラエル 「牡蠣? 人間界の? それ美味しいの?」

ベルゼブブ 「え、ちょっと二人共~?」

※ベルゼブブを置いて去っていくマモンとアズラエル。
 肩組みまでしている。

マモン 「や~、LHとHLSの懇親会なんてどうせロクなことにならないと思ってたが、あんたみたいな真摯に仕事に向き合ってるやつがいるとはな!」

アズラエル 「俺も~。悪魔となんて絶対分かり合えないと思ってたから意外な発見」

マモン 「で、あんた……誰だっけ?」(少しバツが悪そうに)

アズラエル 「……えー、アズラエルって言わなかったっけ?」

マモン 「悪い! 正直、誰かわかってなかった」

アズラエル 「まぁいいけど……よくあるし」

ベルゼブブ 「だよねー。適当に合わせてた~」

アズラエル 「ほんと適当なの多すぎだよね……(急に疲れて)はぁ……やっぱり牡蠣より仕事の方がいいや」

※そっと組んでいた肩を外してひとり歩き出すアズラエル。

アズラエル 「……あ、着信……サンちゃんだし。(ウンザリしつつ通話ボタンを押す)なに、サンちゃん。……え? 終わったからもう帰るし……えー、クミのライブグッズなんていらない……」

※店を出るアズラエル。

マモン 「……結局、俺らだけになっちまったな」

ベルゼブブ 「ねぇ、マモン。残った料理、全部食べていい? コースだからキャンセルできないもんね」

マモン 「ああ、いいぞ。好きにしろ」

ベルゼブブ 「わーい!(店員に向かって)すいませーん。どんどん料理持ってきてー♪」

マモン 「はぁ、やっぱりLHとHLSの懇親会なんて上手くいくわけないな。サタンに報告しておくか」