「LH」廊下

【SE】廊下を歩く靴音(一人分)
 長く静かな廊下をベリアルが歩いている。

【SE】ポンッと抑えめのエレベーターが到着する音
【SE】エレベーターが開く音
【SE】コツッ……と廊下に踏み出す靴音(一人分)

ベリアル
「おや、やはりサタンも呼び出されたんですか。こういう時は必ず私とあなたはセットなんですね」

サタン
「うん? おうベリアル。お前もか……」

ベリアル 「ええ。夕暮れ時の内線電話といえば、アザゼル。もはやお約束になってきましたね」

サタン 「ああ。しかも、決まってロクな用件じゃない。――きっと『暇だから遊んで』とか、『今晩食事を奢って』とか言うんだぜ、今日も」

ベリアル 「はは、まぁまぁ。可愛い後輩の面倒見るのも、上司の役目ですよ」

サタン 「そうだな。……しかし、あのゆとりの親玉みたいな奴を見ていると、正しい上司としての接し方ってのが分からなくなってくるよ」

ベリアル 「あんまり悩むとハゲますよ」

サタン 「そうだよな……って誰がハゲだぁ!!」

ベリアル 「何をムキになってるんですか。つむじの辺りを中心に、まだそれほどはイってませんから、そんなに怒らなくても」

サタン 「ぐ、具体的な部位を……! 『まだ』ってなんだよ?! 『それほどは』って?!」

ベリアル 「心配いりませんよ! 全然大丈夫です」

サタン 「……ほんとか?」

ベリアル 「男の価値は髪の毛の量ではありません」

サタン 「気ィ使った? 今お前気ィ使ったな!?」

ベリアル 「はい。……たとえゆくゆくは、あの人間……たしか、ザビエル? でしたっけ……あのような頭になってしまったとしても。あなたはLH72部門に欠かせない存在であり、私の永遠の上司にして親友である事に揺るぎはありません。安心してください」

サタン 「親友なら否定しろよ……! はぁ、もういい! っていうか、そういうお前は会社的にどうなんだよ!」

ベリアル 「はい?」

サタン 「ほかの部署から、法務のベリアルはやり過ぎだって声が上がって来てるぞ」

ベリアル 「おやおや」

サタン 「ったく、HLSにいた時から全然変わってないな。あんまり腹黒いことばっかりやってっと、また色んなトコから恨みを買うぞ?」

ベリアル 「やだなぁサタン。腹黒いのではなく、円滑に進めるための『根回し』ですよ。トラブルを未然に防ぐのも、法務部の仕事のウチなんですから」

サタン 「……お前の『根回し』には弱みを握って脅すとか、邪魔な奴は闇に葬るとかも含まれるからマズいんだよ……」

ベリアル 「フフッ。親友としての忠告、ありがとう。まぁ弱みを握るという部分では、人間でありながら我が社の特別顧問を務めていただいているあの人には、敵いませんがね~……いや、あれだけ生きていれば、もはや人間ではないかもしれませんが……」